親が高齢になり、その姿をみてイライラして冷たくしてしまう。そのうちに親を憎んでしまう。そうならない為に親も子どもも幸せになれるように親との距離を置くことが大切です。でも同居や近くに住んでいたらどうやって距離をとったらよいのでしょう・・・
本記事は同居、あるいは近所に住んでいる高齢者の親に優しく接したいと悩んでいるあなたへ距離の取り方を解説しています。
私も自分の母親(76歳)と同居しています。イライラの連続でした。しかしこの記事に書いてあることを実践したり心構えをすることで気持ちが楽になりイライラや不安が減りました。
親に優しくできない心理、別居している親との距離の取り方について別記事「高齢者の親にやさしくしたい、でもできない」で詳しく解説しています。リンクを貼っておきますのでよかったら参考にしてください。
参考著書:「親不孝介護」 著者:山中浩之/川内潤
介護が始まる前に気持ちの準備を始める
親も子どもも同居していたり近くに住んでいることで「すぐに何とかしてあげれる、気が付ける」と安心してしまう、あるいは「同居(近所)しているから自分がやるべきなんだろう、やるしかない」と子どもの方が覚悟を決めてしまう事があります。
近くにいるだけに「いつでも手が出せるから何とかなるだろう」と距離が取れない悪条件を好条件と勘違いしてしまいがちです。
しかしそれは大きな誤解なんだと、介護が始まる前に気づいて気持ちの準備をしましょう。
「介護を自分でやる」これは、離職や家庭崩壊にもつなりかねない本当に危険な考え方です。
手を出しすぎるデメリット
親との関係が悪化する
例えば親が近所に住んでいるから会社帰りにちょくちょく寄ったりしていると、親の方も子どもが来る日まで自分でやれるところまでやらずに待っているようになります。
子どもが手伝ってくれるから「うちは生活できているから大丈夫」と、頼めば助けてくれるサービスがあっても支援を受けるチャンスを断ったしまったり、受けようとも思わなくなってしまいます。
子どもも「親をたすける」という役割が当たり前のことと思い、親が困っていることに手を貸しますがだんだん親の体調や、精神状態が悪化してくると無理がたまっていき「会社を休んできているのに家がまったく片付かない」「自分の時間を犠牲にしているのに」とイライラして怒ってしまいます。親の方は「子どもがきても機嫌が悪く怒ってばかり」となって子どもの顔色をうかがったりと、お互いの関係が悪化してしまいます。
親を孤立させてしまう
いつでも手を出してしまうと親の方は「子どもがやってくれる」と思い介護保険や外部サービスに頼ろうとしないことでだんだん親を孤立させてしまいます。
家族が直接親を支援しやすい状態というのは介護にとってはリスクであるということをしっかり理解することが大事です。
「外部に相談する」という発想を親に持ってもらうには「本人に困ってもらう」ことです。「困ったな、でも子どもは来れないしどうしよう?」そこで嫌だけど包括に相談しようという考えに変わってくる状況を作ります。
ご家族のテレビの大音量でお悩みの方へ子どもがやるべきことは親との対話
対話をする目的
親の今後の生活に対してのイメージや希望、思いを共有する為です。
親が何を大切にしていこうとしているのかがわかると安心、安全に走らなくてもすみ、子ども側の不安感が相当下がるそうです。
親の希望がわからないからどうすればいいのかわからなくなって、とにかく安心、安全にに考えが走り「転びそうだから早く老人ホームに入れちゃえ」とか考えてしまいます。
高齢の方にとって転びそうだからなんてさして大事なことではありません。自分から施設に入りたいなんて思う人はほとんどいません。
「転ぶかもしれないから自分の足で馬券買いに行くのやめようかな」と思うお父さんはいません。転ぶかもしれないけどお父さんは今日歩いて馬券を買いに行きたい。
その理解がないと「転ぶと危ないからネットで買えばいい、その方が安全」と子どもは言い出します。
しかし対話をしておく事で何を目的としているのかがわかってきて、間違った方向に行かなくなります。
「お父さんは馬で金儲けしたいんじゃなくて街中を歩きながら知り合いと挨拶して帰りに喫茶店に寄るのが楽しみなんだ」と理解できます。
引用著書:「親不孝介護」 著者:山中浩之/川内潤
実際に私の叔母も早い時期から老人ホームに入居して、そのまま数年後亡くなりました。デイサービスなどを利用することなく急な入居でした。当時は「まだこんなに元気で会話も普通にできるのに本当に入居しなければいけない状況なのか?」と思いましたが「同居している家族が決めたこと、きっと同居していると心配なところがあるんだうな・・・」と思っていました。
時々会いに行くとみるみるうちに痴呆が進み、寝たきりになりました。その状態で数年過ごし亡くなっていく・・・
「いつ会えなくなってもおかしくない状態だから今のうちに会っておいた方がいい」と連絡をもらい、面会に行ったときはベットに寝たまま目を閉じていました。それでも声をかけると叔母は、涙をながしました。「ああ・・・この状態でも何か通じ、感じてくれるんだな」と胸が締め付けられました。
叔母はどんな思いでいたのだろうか?幸せだったのだろうか?希望に近い老後だったのだろうか?
もしかしたら心配なばかりに、叔母の家族は安心安全に走ってしまったのかもしれない・・・と、今になって考えても答えはわかりません。
自分の親が高齢になり時々叔母の事をより一層思い出すことが多くなりました。
良く親と対話をして、少しでも親を理解し自分も後悔しないようにしていきたいです。
何も理解していないときはなんでだろうとイライラしますが、目的がわかると心から納得できます。
【距離はお互いに1人の人間】という理解をする為
子どもは自分が安心する為に親の生活を管理しがちになります。会話を繰り返すのは親の願いや生きがいを理解し、「親には親の生き方がある。」という受け止めをするプロセスです。
自分が親のやりたいことを全て叶えることはできませんし、しようとすればやりきれず疲弊して親を憎みはじめます。だとしたら関わるのではなくて、色々な人の手を借りながら親が好きな事をれている方がいいだろうという考え方にシフトしやすいのです。
親も子どもに負担をかけず、気を使わずに支援を受けて自分のやりたいことを続けて行くという考え方に気づきやすくなります。
お父さん、お母さんの役目以外に一人の人間としての生き方があります。その事を尊重できる心構えをしましょう。
健康でいて!歩けるように足を鍛えて!認知症にならないでね!というのは子供側の理屈なんだね・・・
繰り返しになりますが「距離はお互いに1人の人間」という理解の為に対話が必要です。
親の答えを引き出す聞き方
最初から的確な答えは出ない。繰り返し尋ねる。
方法としては「この先10年でどうしたい?」と繰り返し尋ねることです。
「これから10年間、どういうふうに生活していきたいと思っている?そのイメージってお母さん、お父さんある」と繰り返し尋ねてみましょう。
親の答えを聞き出す為にもまず自分の10年間のイメージを作っておいて「自分はここから10年、きっと子どもは手が離れるし自分の仕事もこんなふうになると思っていて、その中でこういう事を大事にしていきたいと思っているんだけどお父さん、お母さんはこれから10年くらい先の事をどんなふうに考えているの?」と持ちかけてみましょう。
親は「あぁまだ自分をこういうふうにして立ててくれてるんだな」とありがたい気持ちになり、前向きになります。また親もどうしたいかと普通に考えていなかったりもするので聞かれたことが考えるスタートになります。
引用著書:「親不孝介護」 著者:山中浩之/川内潤
最初から的確な答えは出てきません。繰り返し尋ねる事で段々と親が生活の中で、何を大事にしていこうとしているのかが見えてきます。
私も先日母に聞いてみました。「今が一番幸せだからこのままがいい」と今のことを話すだけでやはり的確な答えはでませんでしたがこれからも繰り返し聞いてみようと思います。
今が一番幸せだよ。だからこのままがいいよ
親と同居している場合にすべきこと
親と距離を取ることに罪悪感を持たない
親と適切な距離を取ろうとすると「親不孝」と第三者などから、攻撃をかけられることもあるかもしれません。
ひと昔前とは家族の形が変わっています。昔は家族で面倒を見るしかなかった、人の寿命が短かった時代の習慣が「親のそばにいなさい」と強制してくるのです。
高齢化社会を迎え、知らない人どうしが介護制度を使って支え合う今、昔の常識にとらわれるのは有害です。
確かに介護疲れで悲しい事件も起きてるよね
親に困ってもらうことを恐れてはならない
介護は公的サービスを導入して社会と協力して行うものですが親は「他人の世話になる」事に抵抗を感じる事が多いです。
乗り越える為の有効な方法は本人が困ることです。優しいあなたは弱ってきた親の面倒をつい見たくなりますが「自分だけでは全て対応できない」こともはっきり示しておかないと親はあなたを頼りきりになります。
まとめ
同居や近隣に住んでいる事を親が困った時にすぐに手を出せるから何とかなると好条件に捉えがちだが、実は距離が取れないという悪条件である。
「介護を自分でする」と間違った覚悟を子どもの方がしてしまいがちだが、それは大きな誤解なんだと介護が始まる前に気づいて気持ちの準備をする事が大事。
外部に相談する意識を持ってもらうには親に困ってもらう。
やるべき事は親との対話。この先10年どうしたいか繰り返し尋ねる。親が生活の中で何を大事にしていこうとしているのか、何を大事にしているのかがわかると子ども側の不安感が相当下がる。
お父さん、お母さんである前に一人の人間であることを理解する。
物理的な距離をとることが親も一人の人間であること、自分もまた尊重すべき個人と気づくために大切。
距離が近すぎて手を出しすぎてイライラしていずれ親を憎み関係が壊れるより、外部のサービスを利用しながらお互いがいい関係でいられること、親を個人として大切にすることが本当の親孝行ではないでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。私の場合は母と同居していて、いやでも母の生活状況が目に入り、ゴロゴロしていると怒ってしまいました。でも記事の中にある参考著書「親不孝介護」を読み、すこしづつ実践したり、心構えをすることで以前より母に対する感情が柔らかくなりました。しかし、まだまだ心が重くなることは正直あります。これからも対話を続けながら気持ちをほぐして、心穏やかな母との生活を送れたらいいなと思います。この記事を読んで少しでも気持ちが軽くなってくれたらこんなに嬉しいことはありません。
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